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会議に次ぐ会議,地平線をも隠す書類の山,そして・・・ [仕事とその周辺]

アメリカの大学と軍事研究の関わりを描いた“The Cold War and American Science”について時々書いています。(たとえばイントロダクションの全訳
原著者の内諾はあるものの、出版社の当てのないまま翻訳が8割ほど終わりました。7章から印象的な部分を2カ所紹介します。今の日本の大学が置かれている状況、置かれようとしている状況とウリ二つではないでしょうか? また、後者の、フォン・ヒッペルの引用文はとても文学的です。応援のクリック歓迎

(予算で研究者をコントロール)
CMSE(材料科学工学センター)が特定の研究テーマを押し付ける力には限界があったが(MITは教育機関であり,大学で研究生活を送る人間にとっての最も重要な特権の一つは研究テーマを選ぶ権利である)、CMSEの指導者たちは、スタッフを選別し予算を与えることで、自分たちが相当な支配権を持てることを認識した。「何らかの分野の新しい採用人事で人を選ぶとき、そして共通の予算からある分野を優遇しほかを絞ることで、多大な圧力をかけることが可能だ。どの教授にも、本人やその学生が何を研究すべきだという命令をする必要はない」と言って彼らはARPAのスポンサーらを安心させた.

(原文)
While there were limits to the CMSE's power to dictate specific research agendas ("We must remember that M.I.T. is an educational institution, and that one of the most valued prerogatives of a man in academic life is the privilege of choosing his own field of research"), its leaders recognized that selecting staff and allocating the money gave them considerable control. "By choosing to make new appointments in one field or in another, and by supporting one area generously, another less so, out of funds for the common purpose, it is possible to exercise a great deal of pressure, without dictating to any professor what he or his students should work on," they reassured their ARPA sponsors.

(末尾の部分、アーサー・フォン・ヒッペル*の言葉の引用)
「変化の中の大学」というエッセイで彼(ヒッペル)は次のように述べている.「古い象牙の塔に一体何が起きたのか! ひっきりなしに鳴る電話,実験室をぞろぞろと行く訪問者の群れ,会議に次ぐ会議,地平線をも隠す書類の山,そして,かつてベツレヘムの星に導かれた賢人は,今や形相を変えてモスクワの星と時計を睨む[注].しかしこの騒乱はわれわれ自身の所業に他ならない.大学は,研究が利益をもたらすことを見せ,巨大な研究所は儲けに走った.大学は新しい兵器を開発し,国々は軍事目的の研究所だらけになった.われわれの時代における自然の理解と平和を求めた研究活動の結果が何ということになったのか.」

(原文)
"What has happened to the old ivory tower! Telephones ring incessantly; visitors swarm in droves through the laboratories; meetings crowd meetings; an ocean of papers blots out the horizon; and the wise men, once quietly guided by the star of Bethlehem, now frantically count time by the star of Moscow. Yet this turmoil is of our own doing. Universities showed that research pays, and huge laboratories sprang up for profit; universities devised new weapons, and the countries bristle with laboratories for defense. What an outcome of a search for understanding of nature and for peace in our times."
* フランク・フォン・ヒッペルの父
[注−引用者]米ソ冷戦時代のミサイル開発競争が背景に。「モスクワの星」はソ連の衛星やICBMを、「時計」はミサイル誘導に必要な時間の精密測定技術(原子時計など)を象徴すると思われる。
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「神事」を扱うコミュニティーにおける個人の良心−貴乃花親方の場合 [社会]

(昨日のFB投稿を,少し補筆してブログに格上げします.)
takanohana.jpg2月7日夕方のテレビ朝日の緊急特番「貴乃花親方 すべてを語る」をほぼ全部見た.スポニチによると,視聴率13.6%だったとのことである.(右の写真をクリック) [1401577.gif2/12追記:全録画が公開されています.]

貴乃花親方がメディアに対して沈黙を貫いていた時,彼は理事会に何通もの意見書などを提出していたことが明らかにされた.そして彼と貴ノ岩に対する,協会とメディアによる印象操作という実態が暴露された.

もちろん貴乃花の側の主張を一方的に取り上げているので,協会などの反論も待たなければならないだろうが,証拠と論理性・一貫性のある証言は,とても説得力があると思った.(むしろ協会の側の言い分はこれまですでに一方的かつ過剰に報道されたと言っていいのかも知れない.)

この一件は,単に相撲協会の内部の話題に止まらず,大きく言えば「組織における個人の良心」という規範問題にかかわってきて,「長いものには巻かれろ」「出る杭は打たれる」に代表されるこの国の精神風土までも揺さぶりそうな気配を感じる.その意味で元文科事務次官・前川喜平氏の告発行動と似ているが,今回の件は「現役」の組織人であるという点が大きく違う.また,番組視聴率が示すように,幅広い市井の人々の注目の中で繰り広げられたドラマという点でも,インパクトには格段の差があるだろう.

理事選で2票しか取れなかったことを聞かれても,その事実を淡々と受け止めていて,理事だからどうということはない,「自分は親方だから」と自らの力に自信を示した.

大学の教授会に引き写せば,執行部と違う考えを持っていても「どうせ言っても無駄」などと,自分の臆病さ,怠惰さを「力関係」のせいにする「賢い」教授たちは,昨日のインタビュー番組を見て,貴乃花親方の今回の態度について思索を巡らせて見てはどうか?しかしこの件では事件を見逃し置いてきぼりを食っているのはむしろインテリ層かも知れないので,「切れている電線」をつなぐのはむしろ難しいのかも知れない.

ちなみに,インタビューの中で貴乃花親方は「神事」という言葉を使った.相撲はスポーツではなくやはり「神事」らしい.
4.jpg
(YouTubeから)
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1401577.gif2/15追記:上記の件とは直接は関係しませんが、貴乃花親方に対しては、次のような批判的報道(見解?)もあります。
理事選に敗れた貴乃花親方が弟子を引き連れ“豆まき”した場所は、あのオカルト新興宗教団体だった!(2月4日「リテラ」記事)
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フランスの長寿テレビ番組,知的ゲーム「数字と文字」 [メディア・出版・アート]

(昨夜のFB書き込みと同じです.)
日本のTVの娯楽系長寿番組といえば「笑点」がトップだろう。私もファンでほぼ毎週見ている.
その昔フランスにいた時に見ていた,純粋に知的なゲーム番組”Des chiffres et des lettres”(数字と文字)という番組を思い出した.まさかと思いながら検索してみると,youtubeになんと去年10月放映のものが上がっていた.応援のクリック歓迎


「計算は合ってる」(Le Compte est bon)と「一番長い言葉」(Le Mot le plus long)という二つの種目からなる.後者は,提示される10ぐらいのアルファベットから選び出して最も長い言葉を見つけた方が勝ち,という極めて単純なもの.

上記動画を見る限り、当時とルールは全く変わっていないようだ.驚くべき長寿ぶり,しかも,純粋に知的で地味な番組がこの成績とは驚く.

多くの日本のTV娯楽番組のつまらなさを見るに付け,これをそのまま輸入したらどうだろうかと思う.数字のゲームは全くそのままでいいし,後者はアルファベットを五十音に変えるだけでいいだろう.アクサンなど文字の上に付ける修飾記号は無視されているので,日本語の濁音,半濁音の記号も同様に扱えばいいだろう.

以下,上記の動画からいくつか画面コピーを.

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「準強姦事件逮捕状執行停止問題」の検証を加速せよ−“Black Box”を読んで [社会]

51toF57lPYL._SX344_BO1,204,203,200_.jpg伊藤詩織さんの“Black Box”を読了した.応援の意味でほとんど発売直後に買っていたが,読むのは今になってしまった.ただただ圧倒される.彼女を襲った過酷な事件と現実,彼女の苦しみ,そして勇気とリサーチ力に.また彼女を取り巻く友人などのサポートが大きな力になったことも分かる.警察,メディア,そして政治権力の今の姿を,彼女が遭遇し,また切り開いた鋭い切り口から,その切断面に映る恐怖の影とも闘いながら記録したものだ.

彼女が昨年外国特派員協会で記者会見をした時,それを毎日新聞が完全黙殺したことを3日後の昨年10月27日の記事にしたが,自分の傷口を社会に晒すことにもなる彼女の行動がどれほどのエネルギーと気力を振り絞ったものだったか,あまり想像しなかった.この会見直後のことを彼女は次のように書いている.病院に運ばれ,「それから数日間,体が動かなかった.咀嚼する力もなく,お腹もすかない.固形物は一週間以上,喉を通らなかった.息が深くできず,体は死人のように冷たくなっていた.」(227ページ)

一連の事象のうち,異常な逮捕状の執行停止という件,これも明らかに「事件」と言えるものだ.しかも政治権力,つまり安倍晋三と重大な関わりを持つ事件である状況証拠について,もうすでに多くの人が確認していることだが,あらためてこの本から拾ってみよう.時系列に並べる.(主に213~215ページ)

(2016.5.8)山口氏が週刊新潮のこの事件での取材の件をFBに投稿したのに対し,安倍首相夫人の昭恵氏が「いいね」を押した.
(2016.5.8の数日?後)事件を週刊新潮が取材していることを知った山口氏が,北村という人物に相談を持ちかけるメールを送ったが(間違って週刊新潮に誤送信したため判明),この北村は北村滋・内閣情報調査官に間違いない”ようだ”.
(2016.6.8)発行された逮捕状の直前での執行停止という事態は(ほとんど?)前例のないことだが,それは現場で捜査に当たっている警察官ではなく,ずっと上位にある警視庁刑事課長の中村格氏の「決裁」であることを,のちに中村氏本人が週刊新潮の記者に語っている(週刊新潮2017.5.18号).
(2016.6.9)山口氏の著書「総理」が出版される.

多くの人がすでに議論したことだと思うが,事件化を恐れた安倍首相が,中村格氏を通じてもみ消しを図ったという線が濃厚だ.野党超党派による「準強姦事件逮捕状執行停止問題を検証する会」の活動の活発化を期待する.
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放置される「表現の自由」特別報告の勧告 [メディア・出版・アート]

1170.jpg「週刊金曜日」2月2日号に,昨年6月に出された国連特別報告者デービッド・ケイ氏の報告書を受けてのシンポジウムの記事が出ている.報告書は日本のメディア状況について国連人権理事会に提出されたもので,「メディアの独立性が重大な脅威にさらされている」(同誌引用)と警鐘を鳴らすものだ(1401577.gif報告書原文はこちら).

来日の際,ケイ氏は「生かすも殺すも皆さん次第.この勧告を重視するならば,社会的議論が始まるでしょう」と語った(同誌).しかし半年以上経っても「社会的議論が始ま」っているとは思えない.驚くべきことに,検索語をいろいろ試みても,本文の日本語訳が出てこないのだ.議論の「出発点」にさえ容易には立てない.それどころか,検索でははじめの方には,「反日報告書」と言った類のものが並ぶと言うありさまだ.

気にかかるのは,この記事の中ほどに,東京新聞の望月記者へのバッシングが(官房長官会見での質問が注目されてから)激しくなっているということだ.「望月記者」が2人になり3人になれば,どうと言うことはないだろう.なぜ未だに彼女に続く記者が − と言っても,記者として極めて常識的な振る舞いいをしているに過ぎないと思うが - なぜ出ないのか?それほどまで腰抜け腑抜けばかりの集まりなのか,それとも,欧米と違ってジャーナリストとしての専門教育を受けていないため(→関連記事),「ムラ」の掟に従うしか能がない,と言うことだろうか?

「自主規制が一番危険」と言うケイ氏の言葉も重く受け止めるべきだ.
報告書本文は英文で19ページとのことなので,さほど大部でもない.然るべきジャーナリスト団体のウェブサイトは,万一未だ日本語訳がないのならすぐに翻訳・アップロードして,簡単にダウンロードできるように,そして検索でも上位に来るように,努力していただきたい.応援のクリック歓迎
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関連リンク
報告書全文(本文中にもリンク)
週プレNEWS :
国連特別報告者・デービッド・ケイ氏に独占直撃! 表現の自由・共謀罪に対する懸念を「生かすか殺すかは日本の皆さんと政府次第」[2017年06月18日]
国連特別報告者・デービッド・ケイ氏を独占直撃!「日本の報道機関は政府からの抑圧をはね返す力が弱い」[2017年06月19日]

Human Rights Now の記事:
The UN Special Rapporteur on Freedom of Expression, David Kaye, releases his report on Japan for the 35th Human Rights Council session
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退職金・賃金減額裁判の上告文書と,京都大学の上告文書・棄却決定文書 [仕事とその周辺]

佐賀大学の退職金裁判,高裁判決を不服として,1月19日付で上告の文書(上告理由書,上告受理申立理由書)を最高裁に提出しました.以下に目次付き(各節へのリンク)のHTML文書で公開します.
長いので,いずれ簡潔に要点をまとめたものも用意したいと思います.
応援のクリック歓迎
上告理由書(佐賀大学)
上告受理申立て理由書(佐賀大学)

mikudarihan.jpg国立大学職員の給与・退職金減額に対する一連の訴訟で最高裁まで行ったのは京大訴訟だけと思われます.これは昨年6月に「上告棄却」の決定が出されています.しかし,綿密かつ説得力ある原告らの上告文(上告理由書・上告受理申立て理由書)に対するこの最高裁の決定文(「調書」と言うらしい.右の写真)は,単に上告理由に当たらないと述べるわずか数行のもに過ぎず,これでは最高裁が原告の文書を真面目に読んだかどうかさえ分かりません.

裁判所と言うものが「説明責任」を問われない存在である以上,決定文では少なくとも「仕事はした」かどうか判別できる情報を出す義務があると言うべきでしょう.恐ろしく権威主義的で傲慢な態度と言うほかはありません.

このようなことがまかり通る原因の一つは,この種の裁判が,一般からだけでなくメディアからも全く注目されていないと言うことにあるでしょう.当事者以外は「誰も見ていない」,つまり裁判官らの羞恥心を刺激する要因がほとんどないのです.そこで,少しでも広くこれらの裁判について知ってもらうためには,関係文書をネット上に,しかも裁判所が提供する紙のイメージではなく,検索かつリンク可能なハイパーテキストで公開することが有用だと考えました.そこで手間をかけてこのような文書を作っています.

以下に,京大職組の了解を得て,京都大学の(賃金減額無効訴訟の)上告文書を掲示します.
上告理由書(京都大学)
上告受理申立て理由書(京都大学)

これに対する,最高裁の「調書」(棄却の通知)
同,書類イメージ(上の写真をクリックと同じ)
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リンク:退職金裁判,一つ前の記事は「佐賀大学退職金裁判,高裁判決へのコメント」
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