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本の紹介:ポスト・デモクラシー―格差拡大の政策を生む政治構造 [メディア・出版・アート]

41encm21wTL._SL500_AA240_.jpg一年前に翻訳出版された「ポスト・デモクラシー」という本を読んだ.このタイトルの意味は,20世紀前半に世界中で進んだ「民主化」,つまりデモクラシーの進展が,その後のグローバル企業の隆盛や,政府や政党と企業との進化した癒着の形態によって形骸化させられ,形式的,制度的な外見とはかけはなれて,もはやデモクラシーとは言えない状況にあることを指している.そのような状況下で,民主主義的な平等社会を実現して行くにはどうしたらよいか,というのがこの本のテーマである.著者コリン・クラウチはイギリスの経済社会学者で,主にイギリスとイタリアの政治状況を扱っている.しかし,・・・
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しかし,論点のすべては日本にも全く共通する.冒頭の一節を引用する.
このポスト・デモクラシーというモデルでも,たしかに選挙は存在し,政権を交代させることはできるが,政治の公開討論は,各陣営の説得術の専門家集団によって厳重に管理された見せ物となり,そうした集団が選んだ狭い範囲の争点をめぐって展開される.一般大衆は受動的で静かな,さらにはしらけた態度をとり,与えられたシグナルにしか反応しない.そしてこの見せ物的な選挙ゲームの裏で,選出された政府と,徹底して企業の利益を代表するエリートたちの相互交渉によってひそかに政治は形成されるのである.
まさにわが国の「郵政選挙」のことかと思われるが,「グローバル化」の状況ではそれほどどこも似通っているということだろうか.「専門家集団」は電通を連想させる.さらに,以前の記事で紹介したアインシュタインのエッセイが描いた60年前のアメリカの状況とも重なる.

マルクス主義の,資本主義に真の民主主義はありえないという立場からからすれば,この筆者の見方は「あたりまえ」の一言で片付けられるのかも知れないが,この本のようにその具体的なあり方を明らかにしていくことはとても重要だ.

ヨーロッパの状況を主に扱っているが,下請けの連鎖の多重化,偽装請負,非正規雇用の増大など,日本との類似点が驚くほど多い.「マスゴミ」と言われるようなメディア状況も共通する.

このような,企業による国家支配と,「新自由主義」という過激イデオロギーによって正当化されている資本の猛威に,「平等主義的民主主義者」がどう対抗し,民主主義をどう実現するかがこの本の狙いである.

最後の方にこのための処方箋のいくつかが示してある.実は,そのどれもが,私が考えてきたこと,言ってきたこと,実践してきたことと同じであったり重なったりしているので,「吾が意を得たり」の感がある.おそらく当ブログの読者の方の意見とも共通するものが多いだろう.そのような,多くの人が内心感じ取り必要を感じて実践していたことを学者が言葉にしてくれたという感じだ.その結論部分については,次の記事で.

この本はとても示唆に富む優れた内容のものだが,訳は最悪である.機械翻訳を手直ししたという程度の箇所も少なくないし,意味不明や係り結びの破綻なども多い.やむを得ず原書を注文した.

書誌情報
原書
"Post Democracy (Themes for the 21st Century)" by Colin Crouch
出版社: Polity Pr (2004/8/30)
ISBN-10: 0745633153
ISBN-13: 978-0745633152
発売日: 2004/8/30

ポスト・デモクラシー―格差拡大の政策を生む政治構造
コリン・クラウチ (著)
出版社: 青灯社 (2007/03)
ISBN-10: 4862280145
ISBN-13: 978-4862280145
発売日: 2007/03
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本文中に「次の記事」と書いたのと同じリンクですが,あらためて明記します.
クラウチ教授の処方箋
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