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佐賀大学退職金裁判,高裁判決へのコメント [仕事とその周辺]

(以下は,佐賀大学教職員組合のニュース向けに作った文章ですが,紙面の都合から実際に掲載されることになったのはこれを半分ほどに短縮したものです.そこでもとの長い原稿をブログで公開します.組合ニュース向けの謝辞などはカットしています.実際にニュースに載ったバージョンは後ほど公開予定です.)応援のクリック歓迎

退職金裁判高裁判決について
                  元理工学部教員 豊島耕一
佐賀大学を退職した2013年の11月に佐賀地裁に提訴,4年後の今年3月に判決があり,原告敗訴となったため福岡高裁に控訴していました.その高裁でも11月10日に控訴棄却の判決となりました.しかし判決文全39ページのうち,裁判所自身の考えを述べた実質的な部分はわずか4ページ余りに過ぎません.その主要部分である「争点1」の「本件退職手当規程の改正が従業規則*の不利益変更として合理性を有するか」についての文章は正味4ページに満たないわずか100行です.地裁判決のこれに対応する部分が9ページ弱,232行の半分以下,書いてある内容も地裁の文章を簡略コピペしたようなもので,あらためて批判文を書く必要もないようなものです.到底受け入れられるものではなく,上告することにしました.

「国立大学法人」の独立性を否定
そのような判決文ですが,いくつか気づいたことを書いてみたいと思います.争点の一つ「不利益の程度」については,地裁では,減額幅も国家公務員や他大学と同じ相場だから問題ない(地裁p.41),という言い方でしたが,高裁では「少なくない不利益」だが「減額の程度は約5.77%にとどまり・・・」(高裁p.35)と,どっちつかずの曖昧な表現になっています.

主な争点の「退職手当規程改正の必要性」,つまり減額の必要性について今回の高裁判決は,「文科省は・・剰余金を・・教職員の人件費に充てることは不適切であるとの見解を示していた」から,それを減額分の「補填に充てることは実際上困難」だった,文科省から「官民較差の是正」の方向で要請があったから,国から相当の資金を受けている国立大学としては,これに応じる「事業運営上の必要性もあった」としています(高裁p.36).これはほとんど地裁判決の同じ部分を簡略化しただけのものです.地裁判決では,もっともらしい言葉に言い換えられてはいるものの,“公務員”バッシングに付和雷同し,国からの報復圧力を正当化する文言が並んでいます(地裁p.35〜40).

いわゆる「官民較差の是正」に関しては,「官」や「民」という言葉があまりにも曖昧に,いい加減に使われています.国立大学法人はいったい「官」と「民」のどちらのカテゴリーに属するのでしょうか? 職員は「非公務員」なので「民」に属するはずです.したがって「官民較差の是正」がもし「官」と「民」の較差を縮小することを意味するのであれば,そして「官」の給与等のレベルの方が高いと言う前提であれば,「民」の側,つまり国立大学法人はむしろそのレベルを上げることこそが「是正」の方向になるはずです.ところが「民」であるはずの国立大学を下げろという.何よりも,そもそも政府が「民」の給与等の水準に口出しをすること自体がおかしいわけです.統制経済ではないのですから.国立大学の「法人化」の際にさかんに宣伝された国からの「独立性」を,司法があからさまに否定してしまいました.

文章内部の矛盾を放置
判決文の文章内部にも矛盾があります.上に述べたように,退職金のために「当期に生じた利益をもって特殊要因運営費交付金の減額分の補填に充てることは実際上困難であった」(高裁p.36)とあるのに,別の箇所ではそれを実際にやった大学が複数存在するのを認めています(同p.33~34).この食い違いに対して全く理由も述べず説明もありません.これは,上告の理由として認められる民事訴訟法312条2の六項の「判決に理由を付せず,又は理由に食違いがあること」にも該当するでしょう.

裁判官は高速かつ正確無比の伝達能力を持つのか?
この裁判では,地裁・高裁とも途中で裁判長を含む裁判官が入れ替わりました.高裁では今年6月28日の第一回の法廷から判決までわずか3ヶ月余りしかないのに,3人のうち裁判長を含め2人も代わりました**.しかも法廷では交替の理由などひとことも聞かれません.この裁判で地裁も含め法廷に出された文書は相当な量で,読みこなし理解するだけでもかなりの時間と労力を要するはずです.大学の専門性の高い授業を,学期の途中で放り出して別の教員に丸投げするようなものではないでしょうか.前の裁判官が理解し頭の中に蓄積した情報の量と質を,どのようにして短時間で完璧に次の裁判官に移転するのでしょうか?それとも裁判所には「大脳間直接記憶移転装置 — Brain-to-Brain Direct Memory Transfer System」とでも言うべき,人と人との間で記憶をコピーする装置があるのでしょうか?
そもそも裁判官の異動などの人事権を最高裁事務総局という官僚組織が握っているというのが全く異常で,「司法改革」を言うなら先ずここから手をつけるべきだったでしょう.ちなみにドイツでは本人の希望以外の異動はないとのことです.
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高裁・地裁の判決文などはテキスト化してブログからリンクしています.「ペガサス,裁判,リンクまとめ」で検索.urlはこちら: http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2017-11-21
* 「就業規則」とすべきところを,「従業規則」と誤字を見逃している.
** 当初の大工強裁判長は8月29日に前橋家裁所長に異動.
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