So-net無料ブログ作成

「天使と悪魔」,ローマ・バチカン観光としてなら [メディア・出版・アート]

セルン(欧州原子核研究所)が舞台の一つになり,ラングドン教授の相手役がそこの女性科学者だという.おまけにガリレオや,「宗教と科学」がテーマだ,などという触れ込みだったので,「そんなら見ておかなければ」と,昨夜は「天使と悪魔」に行った.結果は・・・壮大な駄作
まあ,セルンの「オープンキャンパス」とローマ・バチカン観光に行くと思えば,チケット代の3割ぐらいにはなるかも知れない.
応援のクリック歓迎 (1日1回まで)

物理学の小道具(大道具?)として反物質が出てくるので,ちょっとだけコメントを.

素粒子レベルでの反物質つまり反粒子は,電子とほかの性質が全く同じで電気の符合だけが反対の,つまりプラスの,「陽電子」が古くから知られている.また陽子,つまり水素イオンについても,マイナスの電気を持った「反陽子」が発見されてすでに50年になる.これはセルンでビームとして「量産」されるようになってすでに数十年になる.しかし原子レベルとなると,最も簡単な原子である反水素,つまり反陽子の周りを陽電子が回っている原子が初めて作られたのが2002年のことである*.

次に「反ヘリウム」が作られるのはいつのことか分からない.現在の技術の延長としては不可能であろう.

さて,この反物質が,たとえば反水素のガスの何グラムで,映画のような5キロトンの爆発に相当するか計算して見る(ちょっとスジのネタバレになってしまった).

有名なアインシュタインの関係式 E=mc^2 を使えばよい.反物質は同じ量の物質と消滅してエネルギーに変わるので,反物質1kgであればmに2を代入,c(光速)は3x10^8m/sとして,1.8x10^17Jとなる.反物質1gならその千分の1つまり1.8x10^14J.

TNT火薬5キロトンは1.3x10^13Jに相当するので**,したがってこれに対応する反物質の量は0.072gということになる.映画に出てきたカプセルにあるのが液体とすれば,だいたい見た感じと一致する.もっとも,反物質の原子や分子は電気を持たないので,磁場や電場の組み合わせでそれを宙づりにすることは出来ない.

--------
* 東大・早野龍五氏のウェブサイト参照
http://nucl.phys.s.u-tokyo.ac.jp/hayano/jp/反水素原子.html

** 筆者の「エネルギー問題関連数値」参照下さい.
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/EnergyProblem/table-of-cons.pdf

単位記号:kg:キログラム,g:グラム,J:ジュール,m/s:メートル毎秒.
指数表示:たとえば,1.3x10^13は,「1.3掛ける10の13乗」と読んで下さい.
--------
1401577.gif6月9日追記
上記の早野龍五氏が自分のウェブサイトで「物理学者とともに読む 『天使と悪魔』の虚と実 50のポイント」と題して,詳細に記事を書いています.
https://blog.so-net.ne.jp/MyPage/blog/article/edit/input?id=12984422
また,「日経サイエンス」最新号(7月号)には,「『天使と悪魔』と素粒子物理学」と題した4ページの記事があります.実はこの記事で,早野氏の上記のページを知りました.


nice!(0)  コメント(5)  トラックバック(3) 

nice! 0

コメント 5

JUNSKY

ネタバレ解説ありがとうございます。

【TNT火薬5キロトンは1.3x10^13Jに相当するので**,したがってこれに対応する反物質の量は0.072gということになる.映画に出てきたカプセルにあるのが液体とすれば,だいたい見た感じと一致する.もっとも,反物質の原子や分子は電気を持たないので,磁場や電場の組み合わせでそれを宙づりにすることは出来ない.】

というのを見て、なるほど映画の中にあったボトルの中身程度で、それほどの威力があるのか!と感心しました。

この映画は、公開直後に観ましたが、までレビューを書いていませんでしたので、ここの記事も参考にしてその内書きます。
その節は引用させていただきます。(もちろんリンク付きで)

by JUNSKY (2009-05-24 12:23) 

yamamoto

お役に立ちましたか.ところであのヘリコプターは凄い性能のもののようですね.さもないと・・・いや,ますますネタバレになるので止めておきます.
by yamamoto (2009-05-24 13:26) 

JUNSKY

映画レビュー短く書きました。
で、爆発の威力について引用させて頂きました。

質問ですが、セルン(欧州原子核研究所)の場面はロケなんでしょうか?
セットにしては巨大で精密な気がしましたので、“蒸気”漏れはお笑いですが・・・セットやCGを作るよりロケの方が安上がりでしょうから、セルンの広報を兼ねてロケに協力したとか・・・?

ヘリコプターのくだりですが、爆発寸前にパラシュートで脱出したのでしょう。
しかし、『TNT火薬5キロトン』の爆発が起こっているのに、彼が生きて居られるはずもなく、そのうえ爆風でパラシュートで降下できるはずもなく、またバチカン広場の人々が生きているはずもなく、なんともいい加減な映画シナリオですね。この部分は、素人が考えても解るほど稚拙な展開です。
「壮大な駄作」でした。
by JUNSKY (2009-05-27 09:37) 

yamamoto

(これから映画を観ようと思っている人はこのコメントを読んではいけません.)
実験のハードウェアが映りましたが,これは実写でしょう.コンピュータルームはセットかもわかりません.
ヘリコプターですが,地上があの程度の被害ですむには,おそらく数千メートル以上で爆発させないといけません.そんなに上がれるものかと思って調べたら,なんと1万メートルも上がれるものがあるのですね.自動操縦で脱出したことになっているので,時間の問題を別にすれば,辻褄は合うかも知れません.
by yamamoto (2009-05-27 12:52) 

yamamoto

反物質研究のパイオニア,早野氏のサイトでの,この映画に関する記事の紹介を追記しました.日経サイエンスの記事も.
by yamamoto (2009-06-09 23:43) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

トラックバック 3