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佐賀県議会での奈良林直氏の発言について-その3 [仕事とその周辺]

1401577.gif追記:福岡核問題研究会による包括的な批判です.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2014-04-04

自民党・稲富氏とのやりとりでの,放射能・放射線安全神話批判の続きです(録画はこちら).応援のクリック歓迎
稲富氏が質問の中で,年14.2mSvの環境で住んでいた女性は体に変調を来したようなことはない,と言ったのに対し,奈良林氏は,全く同意,よく調査されていると,全面的な賛意を示しています.このような低線量被ばくでは影響は確率的であるので,1例だけを取り上げての議論は全く意味がありません.このことを指摘するどころか「全く同意」などと言うのは,放射線影響のイロハを知らない者,と言うべきでしょう.

稲富氏が,中川恵一氏の発言を引用しながら,チェルノブイリでは「セシウムによる発ガンは25年経過した現在でも全く確認されていない」と述べたのを受けて,奈良林氏は「300mSv以下は全く差がない」というように,あたかも低線量被ばくの影響に「しきい値」が存在するかのようなことを述べています.その後も,確率的影響という考えは全く出て来ません.

原発推進派も認めているはずのICRPの基準・見解ですが,それはこの問題ではどうなっているでしょうか.包括的な最新の文書は2007年勧告ですが(→所蔵大学図書館,佐賀県内では佐賀大学のみ所蔵),その中から低線量被ばくのリスクについて述べているところを引用します(末尾に原文も転載).
(36) 年間およそ100mSvを下回るの放射線量において,委員会は,確率的影響の発生の増加は低い確率であり,またバックグラウンド線量を超えた放射線量の増加に比例すると仮定する。委員会は,このいわゆる直線しきい値なし(LNT)のモデルが,放射線被ばくのリスクを管理する最も良い実用的なアプローチであり,"予防原則"(UNESCO,2005)にふさわしいと考える。委員会は,このLNTモデルが,引き続き,低線量・低線量率での放射線防護についての慎重な基礎であると考える(ICRP,2005d)。
(65) したがって,委員会が勧告する実用的な放射線防護体系は,約100mSvを下回る線量においては,ある一定の線量の増加はそれに正比例して放射線起因の発がん又は遺伝性影響の確率の増加を生じるであろうという仮定に引き続き根拠を置くこととする。この線量反応モデルは一般に"直線しきい値なし"仮説又はLNTモデルとして知られている。この見解はUNSCEAR(2000)が示した見解と一致する。様々な国の組織が他の推定値を提供しており, そのうちのいくつかはUNSCEARの見解と一致し(例えばNCRP,2001;NAS/NRC,2006),一方,フランスアカデミーの報告書(French Academies Report,2005)は,放射線発がんのリスクに対する実用的なしきい値の支持を主張している。しかし,委員会が実施した解析(Publication 99;ICRP,2005d)から, LNTモデルを採用することは,線量・線量率効果係数 (DDREF)について判断された数値と合わせて,放射線防護の実用的な目的,すなわち低線量放射線被ばくのリスクの管理に対して慎重な根拠を提供すると委員会は考える。
このように,100ミリシーベルト以下の低線量域においても,線量と,効果つまり主にがんのリスクとは,比例するものと考えるべし,とされているのです.この,言わば「国際合意」など存在しないかのように思わせること,これが二人の「掛け合い」の目的のように思われます.

なお,これらのやりとりより少し前で,稲富氏が日常生活での放射線被ばく量を述べる際,MRI検査まで含めていますが,もちろんこれは(おそらくCT検査などの)間違いで,MRIでは放射線は使われません(電波と,ゆっくり変化する強い磁場が使われる).この誤りについては,少なくとも理系の専門家としては指摘してやるのが親切というものでしょう.ちなみに,MRIは Magnetic Resonance Imaging の頭文字を取ったもの.
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追記:アイソトープ協会による訳は出来が悪く,日本語になってない箇所も多くあります.原文を以下に転載します.
(36) At radiation doses below around 100 mSv in a year, the increase in the incidence of stochastic effects is assumed by the Commission to occur with a small probability and in proportion to the increase in radiation dose over the background dose. Use of this so-called linear-non-threshold (LNT) model is considered by the Commission to be the best practical approach to managing risk from radiation exposure and commensurate with the ‘precautionary principle’ (UNESCO, 2005). The Commission considers that the LNT model remains a prudent basis for radiological protection at low doses and low dose rates (ICRP, 2005d).
(65) Therefore, the practical system of radiological protection recommended by the Commission will continue to be based upon the assumption that at doses below about 100 mSv a given increment in dose will produce a directly proportionate increment in the probability of incurring cancer or heritable effects attributable to radiation. This dose-response model is generally known as ‘linear-non-threshold’ or LNT. This view accords with that given by UNSCEAR (2000). Other estimates have been provided by various national organisations, some in line with the UNSCEAR view (e.g., NCRP, 2001, NAS/NRC, 2006) while a report from the French Academies (2005) argues in support of a practical threshold for radiation cancer risk. However, from an analysis conducted by the Commission (Publication 99, ICRP, 2005d), the Commission considers that the adoption of the LNT model combined with a judged value of a dose and dose rate effectiveness factor (DDREF) provides a prudent basis for the practical purposes of radiological protection, i.e., the management of risks from low-dose radiation exposure.

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