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日本語の歌詞で歌われたシューベルト歌曲(その2) [趣味]

先日の記事でシューベルトの歌曲を現代日本語の歌詞で歌ったCDを紹介しましたが,その末尾で,母語の歌詞で聴くのが「正しい」鑑賞の仕方ではないかと書きました.
https://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2018-09-27#toyo
ところが,同じような考えの人がだいぶ前から活動しているのを知りました.「国際フランツ・シューベルト協会」というサイトがあります.
http://schubertiade.jp
その「活動の柱」の3番目の項目に「『シューベルトの歌曲集』の日本語版を作成、日本語で歌うことによってリードを普及させる」とあり,「邦詩で歌える」訳詞を公開しています.
http://schubertiade.jp/schubertmusik.htm

そこで,前の記事で紹介した「白鳥の歌」の第7曲“Abschied”(別れ)の訳詞を見てみると,松本訳の「じゃあね」はやはり「さらば」になっていましたが,3番の冒頭「優しい少女よ」(松本訳,原文はihr freundlichen Mägdlein dort)はなんと「やさしいギャルたちよ」.ここで「ギャル」は全くいただけません.

ところで,ドイツ語の歌詞を日本語に訳する場合,盛り込める情報量に決定的なハンディがあります.ドイツ語では子音で始まり子音で終わる単語が多いし,しかもどちらにもしばしば複数の子音が重なります.このため1音節で1単語を表現できるケースが多い.ところが日本語では1音節は1つの子音+1つの母音で1文字のため,1単語でも2音節以上を要する場合が多い.つまり歌では2つ以上の音符を消費してしまいます.上の,“ihr freundlichen Mägdlein dort”では7音節(音符8個),訳ではいずれも8〜9音節と多いが全部訳し切れてない.つまり日本語で歌うためには,訳詞というよりは「作詞し直す」というほどの作業が必要のようです.

それにしても,「正しく」鑑賞するためには日本語の訳詞が是非必要と思うので,松本隆氏のような人が次々と現れて欲しいと思います.シューベルト,シューマンなどの歌曲は200年近いロングヒットを続けていますが,ファンの層という点では,今日,少なくともたまにでも聴くという人は日本で1,000人に1人もいるでしょうか.人の好みは様々とは言え,これらの作品群は人類的な宝だと思うので,ファンがもっと,少なくとも人口の1パーセント程度までは増えるように,クラシック音楽業界の方々には営業努力をお願いしたいものです.

ところでこの“Abschied”は,ある若い男がそれまで住んでいた街を去る時の情景を歌ったものですが,子馬(Rößlein)が出てくるのでその乗り物は多分馬車でしょう.あるいは一人で騎乗しているのかもしれませんが,ピアノの伴奏は私には馬車の乗り心地(乗ったことはないですが)を思わせます.繰り返される不意の強拍(楽譜の赤のマーク)は,道路の凸凹で車体がガクンと揺れるのを表しているのではないでしょうか.(この曲の48小節からをフリー楽譜サイトから転載)
swing1h.jpg
楽譜の部分の少し前から(バリトン:クリスチャン・ゲルハーヘル,ピアノ:ゲロルド・フーバー)
なお,この「白鳥の歌」の中で私が一番好きなのは最後の「鳩の使い」です.以下に,CDで実際に歌われている松本隆氏の訳詞と,原詩を転載します.この訳詞はとても気に入っています.(この「白鳥の歌」の訳詞全部がMOJIMというサイトのこのページにあります.)

Die Taubenpost/鳩の使い
         作曲 F.シューベルト
         作詞 J.G.ザイドル
         訳詞 松本隆

伝書鳩を飼ってる
言いつけを守り
目的地めざし迷いもない

もう何千四も往復した
素敵な街越え舞い降りるよ
あの娘の家

鳩は窓を覗いて
合図を送り
あの娘の返事を
持って帰る

文字じゃなく
涙を鳩に託そう
おお濡れた翼で必死に舞う
愛の使い

夜でも昼間でも
苦にならない
翼で飛べれば
幸せだと

飽きず疲れずに
自由に飛び
どんな見返りも
欲しがらずに
裏切らない

この鳩を胸に抱き
大切にしたい
ああ白い羽の烏の名は「憧れ」
「憧れ」だよ

この鳩を胸に抱き
大切にしたい
ああ白い羽の鳥の名は「憧れ」
「憧れ」だよ

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原詩

Die Taubenpost

Ich hab eine Brieftaub in meinem Sold, die ist gar ergeben und treu,
sie nimmt mir nie das Ziel zu kurz, und fliegt auch nie vorbei.

Ich sende sie viel tausendmal auf Kundschaft täglich hinaus,
vorbei an manchem lieben Ort, bis zu der Liebsten Haus.

Dort schaut sie zum Fenster heimlich hinein,belauscht ihren Blick und Schritt,
gibt meine Grüsse scherzend ab und nimmt die ihren mit.

Kein Briefchen brauch ich zu schreiben mehr,die Träne selbst geb ich ihr,
o sie verträgt sie sicher nicht, gar eifrig dient sie mir.

Bei Tag,bei Nacht,im Wachen,im Traum,ihr gilt das alles gleich,
wenn sie nur wandern kann, dann ist sie überreich.

Sie wird nicht müd, sie wird nicht matt,der Weg ist stets ihr neu,
sie braucht nicht Lockung,braucht nicht Lohn,die Taub ist so mir treu.
 
Drum heg ich sie auch so treu an der Brust, versichert des schönsten Gewinns,
Sie heisst die Sehnsucht, kennt ihr sie?
Kennt ihr sie ,die Botin treuen Sinns.

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追記:こちらに楢崎誠広という歌手の方の訳がありますが,歌うためのものではないようです.
歌曲集「白鳥の歌」
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