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トリチウム放出の危機と赤旗報道の問題点 [仕事とその周辺]

福島原発事故で出た大量の汚染水が太平洋に放出される恐れが出てきた.国の汚染水対策処理委員会が,高濃度のトリチウムを含むこの汚染水の海洋放出を決めてしまいそうな状況だ.これについての8月31日の「しんぶん赤旗」の記事は,そうとう問題あり.
海洋放出反対 相次ぐ トリチウム汚染水・福島公聴会
tritiium-akahata180831-1.gif
「厳しい批判が相次」いだ,とあるが,この記事には,公聴会にそもそも何が提案されたのかが書かれていない.おそらく海洋放出だろう,と想像するしかない.また,トリチウム以外の放射性物質も混入していることを取り上げているが,肝心のトリチウムそのものの危険性が薄れている.また15面の「解説」では,「トリチウムの処分をめぐっては風評被害の懸念が大きく」とし,本来の実際の危険性への言及は皆無に近い.

当ブログの関連記事:トリチウムのマルチヒット効果川内原発トリチウム放出再開
東電内規に従えば,法定濃度で全部放出するには40年以上要する件:
細川弘明氏の指摘と質問,まさのあつこツイッター,8月31日
キノリュウが行く,2013年3月1日

以下は,ネットには出ていない,15面の「解説」.

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京大学長は米軍資金を容認するのか [仕事とその周辺]

yamagiwa180604mainichi-w1500.jpg京大学長で学術会議会長、そして国大協会長という、日本のアカデミズムの言わば頂点にある山極寿一氏の、軍事研究についての考えが、毎日新聞6月4日付けに詳しく載っている。「そこが聞きたい 軍事研究規制の道筋 一線画す共通の指針を」というタイトルで、京大が3月に発表した基本方針や、これからの規制のあり方について述べている。驚いたのは米軍資金についての次の一節だ。

「米軍の研究資金は研究者の裁量に自由度が高いものもあり、研究成果が何に使われるかを研究者自身が確認できるなら、認めてもいいと思います。」

記者から「京大は1 9 6 7年に『軍からの研究資金は受けない』と学内で申し合わせています。後退では」と問われると、次のように、特許の取得が重要などと枝葉的な議論に逃げている。

「そうではありません。研究内容を審議する委員会を常設し、目的や利用のされ方などを見極めます。委員会は審議で認めたら、その理由を全教職員に説明する義務を負います。中でも、私は特許の取得が重要だと思います。特許があれば研究者自身や所属機関か研究成果の使われ方に対して意見を言え、責任を持てるからです。」

以前の記事「軍事研究問題の重要ポイントは『人間関係資本』」に書いたように、研究者は軍事研究に直接加担しなければいいというだけでは不十分である。専門家としての責任ある社会的発言の義務もある。米軍から資金を受け取っていて、米軍というスポンサーの意向を気にせずにこの責任が全うできると思うのだろうか。

全大学関係者、とりわけ京都大学の皆さんは、山極氏のこのような態度について追及して欲しい。
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山極氏の別の発言に関する記事:国大協会長が「法人化は失敗だった」(3月10日)
軍事研究に関する記事の例:アメリカのトップ大学での軍事研究の歴史
筆者の軍学共同問題についての論文:科学の軍事利用と科学者の抵抗―歴史と運動に学ぶために―(「日本の科学者」2016年7月)
関連スピーチ:2016年10月7日,九大2017年3月,大分
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退職金裁判,最高裁の決定文 [仕事とその周辺]

saikousai180524-1.jpgsaikousai180524-2.jpg退職金裁判で最高裁に上告していましたが,右がその決定文です.「門前払い」です.

昨日(6月4日),佐賀中央法律事務所で東島弁護士と記者会見しました.以下はその配布資料です.
佐賀大学退職金引下げ無効訴訟 ―概要、争点、各判決の内容、批判- (東島弁護士)

最高裁決定について+退職金裁判高裁判決について(豊島)

私の,「最高裁決定について」を,以下に転載します.
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最高裁決定について
  原告 豊島耕一,2018年6月4日

佐賀大学の退職金裁判に関する最高裁決定について,簡単に4点述べます.

1.最高裁が上告文書を真面目に読んだかどうかを検証できない.

我々の上告に対して最高裁から5月24日付けで棄却の決定通知が届けられた. 本文は,棄却の理由として単に民訴法 312 条と 318 条を挙げるのみで,わずか 257 文字にすぎない.我々の上告文がなぜこれらの条項を満たさないかについての議論 は一言もない.従ってこの判断が妥当かどうかを,我々だけでなく第三者も検証で きない.さらにいえば,最高裁が原告の文書を真面目に読んだのかどうか,つまり 真面目に仕事をしたかどうかさえ分からない.

裁判所は,判決文以外では「説明責任」を問われる機会がないので,このような 態度は,「最高裁なのだから正しい」と言うに等しい傲慢なものと言わざるを得ない.

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「冷戦とアメリカの科学」最終章の抜粋 [仕事とその周辺]

当ブログで再三紹介しているSW Leslie氏の,"The Cold War and American Science" という本ですが(例えばこの記事),全部の粗訳が終わりました.今回は,その最終章の冒頭2ページの訳と,残りの部分の抜粋を紹介します.

img856ph3h.jpg9章 審判の日々:3月4日と4月3日

MITの教員メンバーは,1969年1月にストライキを呼びかけた.MIT自身へのストライキではなく,むしろ「米国における生活の中の科学と技術のいまの役割に関連した問題と危険について公開の討論」を誘発することをめざしたシンボリックな意志表示であった.いつものように仕事をする代わりに,同僚や学生たちに科学の利用や悪用について,その1日,深く考えることを強く勧めた.3名の学科長を含む,科学者と工学者である48名の教員が「3月4日声明」に署名した.(右の写真のキャプション:ケンプリッジ警察が反戦活動家を排除するのを眺める機器研究所の職員.警察はデモ隊をすぐに追い払ったが,シット・イン,ティーチ・インや同様のイベントは,MITとそれに率いられる軍事資金による研究に国民的関心を集めた.)

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AI研究者が兵器利用に反対 [仕事とその周辺]

ai-weapon-mainichi180405.gif今日(4/5)の毎日に「AI研究者『兵器開発NO』」というタイトルで,各国AI研究者60人ほどがロボット兵器開発に手を染める韓国の大学との「絶交」を宣言したという記事が目に止まりました.
ネット上の記事
技術ニュースサイト(英字)の記事
 #知の暴力
毎日の記事から冒頭部分を引用:
「世界30の国・地域の人工知能(AI)やロボット工学の研究者らは4日、AIを用いた軍事技術の研究センターを設置した大学「韓国科学技術院」について「ロボット兵器の開発競争を加速させる動きで遺憾だ」と批判、開発をしないと確約するまで絶交すると宣言した。
 呼び掛けたのは、AIの研究で知られるオーストラリアのトビー・ウォルシュ氏。ロボット研究の中村仁彦・東京大教授ら60人近くが賛同した。」

関連して,このような,新技術の軍事利用に先手を打って禁止する,というアイデアが,科学技術倫理の教科書にあるので紹介します.
Raymond E. Spier編集による“Science and Technology Ethics” (2002)の207-212ページです.

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川内原発トリチウム放出再開 [仕事とその周辺]

九電の「廃棄物の処理」のページにある原発からのトリチウム放出量をチェックしてみると、3年前に運転を再開した川内原発は、そのトリチウム大量放出も「再開」していることが分かります。玄海もこのまま運転を続ければ、同じような大量放出を始めることになるでしょう。
tritium-kyuden.jpg
ちなみに、3.11以前に玄海原発が稼働していた約10年間に環境に放出したトリチウムは、福島原発事故の汚染水タンクにあるその量に匹敵します。放出されるトリチウムは周辺での白血病多発の原因である疑いが大です。次をご覧ください。
http://ad9.org/blog/nuclear/y2017/saikadohantai-kumamoto.pdf
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2017-06-16

関連記事:原発からのトリチウム放出
     トリチウムのマルチヒット効果
     人工放射能と自然放射能とでは人体作用が違うのか?
     カリウム40とセシウム137の違い

追記:2012年から3年間はほぼ停止しているため数字が小さくグラフではほとんど見えません。表と対数グラフ1401577.gifにすると次のとおり。(画像クリックでpdfへ)

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国大協会長が「法人化は失敗だった」 [仕事とその周辺]

yamagiwa.jpg国大協会長の山極寿一氏(京都大学学長)が「法人化は失敗だった」と発言しています.(右の画像をクリック)
さて,それではこの問題が起きた2000年代初頭,彼はどのような発言,態度を取ったのか知りたいものです.当時この問題での氏の発言を聞いた記憶はありません.もし沈黙していたのであれば,他人事ではなく「自己批判」も必要でしょう.(1401577.gif追記:国大協会長としての発言なので,彼個人というより,この政策に協力してきた国大協としての反省が必要です.)
なお,上記読売の記事にある「日本は初等中等を含め、世界に対して誇れる教育をしてきた」という発言は一面的過ぎます.多くの人が指摘する否定的面も多々あります.「どの側面では」などの限定をしないと「日本すごーい」と一緒です.

国立大学の「法人化」問題で,「週刊金曜日」2002年4月19日号に発表し,「ペガサス・ホームページ」に転載した拙文を,この際当ブログにも転載します.(関連ページ:国立大学「独立」行政法人化問題資料集国立大学独法化阻止全国ネットワーク
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kin-yobi20020419arrow.jpg政府が実施を急ぐ独立法人化
大学の“独立”は逆に失われる恐れ

  英訳
          豊島耕一

政府は二〇〇四年度にも,大学を国の行政組織から独立させる「独立行政法人化」を実施しようとしている。
目論見通りにいくと、「独立」の言葉とは裏腹に、文部科学省の規制力が強まり、大学の廃校か存続の権限さえも大臣が握ることになる。憲法や教育基本法が保障する「学問の自由」「大学の自治」に真っ向から挑戦する制度改悪だが、反対の動きは極めて鈍い。

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会議に次ぐ会議,地平線をも隠す書類の山,そして・・・ [仕事とその周辺]

アメリカの大学と軍事研究の関わりを描いた“The Cold War and American Science”について時々書いています。(たとえばイントロダクションの全訳
原著者の内諾はあるものの、出版社の当てのないまま翻訳が8割ほど終わりました。7章から印象的な部分を2カ所紹介します。今の日本の大学が置かれている状況、置かれようとしている状況とウリ二つではないでしょうか? また、後者の、フォン・ヒッペルの引用文はとても文学的です。応援のクリック歓迎

(予算で研究者をコントロール、207ページ)
CMSE(材料科学工学センター)が特定の研究テーマを押し付ける力には限界があったが(MITは教育機関であり,大学で研究生活を送る人間にとっての最も重要な特権の一つは研究テーマを選ぶ権利である)、CMSEの指導者たちは、スタッフを選別し予算を与えることで、自分たちが相当な支配権を持てることを認識した。「何らかの分野の新しい採用人事で人を選ぶとき、そして共通の予算からある分野を優遇しほかを絞ることで、多大な圧力をかけることが可能だ。どの教授にも、本人やその学生が何を研究すべきだという命令をする必要はない」と言って彼らはARPAのスポンサーらを安心させた。

(原文)
While there were limits to the CMSE's power to dictate specific research agendas ("We must remember that M.I.T. is an educational institution, and that one of the most valued prerogatives of a man in academic life is the privilege of choosing his own field of research"), its leaders recognized that selecting staff and allocating the money gave them considerable control. "By choosing to make new appointments in one field or in another, and by supporting one area generously, another less so, out of funds for the common purpose, it is possible to exercise a great deal of pressure, without dictating to any professor what he or his students should work on," they reassured their ARPA sponsors.

(末尾の部分、アーサー・フォン・ヒッペル*の言葉の引用、211ページ.1401577.gif2018年5月改訂)
彼は「変化の中の大学」というエッセイで,彼の同世代の科学者やエンジニアにとってほとんど碑文のように聞こえる文章を書いた.「古い象牙の塔に一体何が起きたのか!ひっきりなしに鳴る電話,実験室をぞろぞろと通って行く訪問者の群れ,会議に次ぐ会議,水平線まで覆い尽くす書類の海,そして,かつてベツレヘムの星に導かれた賢人は,今や必死の形相でモスクワの星と時計を睨む.しかしこの騒乱はわれわれ自身の所業に他ならない.大学は,研究が利益をもたらすことを見せ,巨大な研究所は儲けに走った.大学は新しい兵器を開発し,国々は軍事目的の研究所だらけになった.自然の理解と平和とを求めた探求の結末が,われわれの時代に何ということになってしまったのか.」

(原文)
In an essay entitled "The University in Transition," he penned what almost sounded like an epitaph for his generation of university scientists and engineers: "What has happened to the old ivory tower! Telephones ring incessantly; visitors swarm in droves through the laboratories; meetings crowd meetings; an ocean of papers blots out the horizon; and the wise men, once quietly guided by the star of Bethlehem, now frantically count time by the star of Moscow. Yet this turmoil is of our own doing. Universities showed that research pays, and huge laboratories sprang up for profit; universities devised new weapons, and the countries bristle with laboratories for defense. What an outcome of a search for understanding of nature and for peace in our times."
* フランク・フォン・ヒッペルの父
[注] 米ソ冷戦時代のミサイル開発競争が背景に。「モスクワの星」はソ連の衛星やICBMを、「時計」はミサイル誘導に必要な時間の精密測定技術(原子時計など)を象徴すると思われる。
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退職金・賃金減額裁判の上告文書と,京都大学の上告文書・棄却決定文書 [仕事とその周辺]

佐賀大学の退職金裁判,高裁判決を不服として,1月19日付で上告の文書(上告理由書,上告受理申立理由書)を最高裁に提出しました.以下に目次付き(各節へのリンク)のHTML文書で公開します.
長いので,いずれ簡潔に要点をまとめたものも用意したいと思います.
応援のクリック歓迎
上告理由書(佐賀大学)
上告受理申立て理由書(佐賀大学)

mikudarihan.jpg国立大学職員の給与・退職金減額に対する一連の訴訟で最高裁まで行ったのは京大訴訟だけと思われます.これは昨年6月に「上告棄却」の決定が出されています.しかし,綿密かつ説得力ある原告らの上告文(上告理由書・上告受理申立て理由書)に対するこの最高裁の決定文(「調書」と言うらしい.右の写真)は,単に上告理由に当たらないと述べるわずか数行のもに過ぎず,これでは最高裁が原告の文書を真面目に読んだかどうかさえ分かりません.

裁判所と言うものが「説明責任」を問われない存在である以上,決定文では少なくとも「仕事はした」かどうか判別できる情報を出す義務があると言うべきでしょう.恐ろしく権威主義的で傲慢な態度と言うほかはありません.

このようなことがまかり通る原因の一つは,この種の裁判が,一般からだけでなくメディアからも全く注目されていないと言うことにあるでしょう.当事者以外は「誰も見ていない」,つまり裁判官らの羞恥心を刺激する要因がほとんどないのです.そこで,少しでも広くこれらの裁判について知ってもらうためには,関係文書をネット上に,しかも裁判所が提供する紙のイメージではなく,検索かつリンク可能なハイパーテキストで公開することが有用だと考えました.そこで手間をかけてこのような文書を作っています.

以下に,京大職組の了解を得て,京都大学の(賃金減額無効訴訟の)上告文書を掲示します.
上告理由書(京都大学)
上告受理申立て理由書(京都大学)

これに対する,最高裁の「調書」(棄却の通知)
同,書類イメージ(上の写真をクリックと同じ)
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リンク:退職金裁判,一つ前の記事は「佐賀大学退職金裁判,高裁判決へのコメント」
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佐賀大学退職金裁判,高裁判決へのコメント [仕事とその周辺]

1401577.gif本件は2018年1月19日付けで上告しました.→上告文書など
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(以下は,佐賀大学教職員組合のニュース向けに作った文章ですが,紙面の都合から実際に掲載されることになったのはこれを半分ほどに短縮したものです.そこでもとの長い原稿をブログで公開します.組合ニュース向けの謝辞などはカットしています.実際にニュースに載ったバージョンは後ほど公開予定です.)応援のクリック歓迎

退職金裁判高裁判決について
                  元理工学部教員 豊島耕一
佐賀大学を退職した2013年の11月に佐賀地裁に提訴,4年後の今年3月に判決があり,原告敗訴となったため福岡高裁に控訴していました.その高裁でも11月10日に控訴棄却の判決となりました.しかし判決文全39ページのうち,裁判所自身の考えを述べた実質的な部分はわずか4ページ余りに過ぎません.その主要部分である「争点1」の「本件退職手当規程の改正が従業規則*の不利益変更として合理性を有するか」についての文章は正味4ページに満たないわずか100行です.地裁判決のこれに対応する部分が9ページ弱,232行の半分以下,書いてある内容も地裁の文章を簡略コピペしたようなもので,あらためて批判文を書く必要もないようなものです.到底受け入れられるものではなく,上告することにしました.

「国立大学法人」の独立性を否定
そのような判決文ですが,いくつか気づいたことを書いてみたいと思います.

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